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“見た目”で片づけられてきた、本当の怖さ

  • のぞみ 箕村
  • 5月19日
  • 読了時間: 6分

「怖い思いをしたことがある」と言っても、

本当に伝わることは、あまりなかった。


「モテるって大変だね」

「可愛いから仕方ないよ」

「贅沢な悩みだよ」

そういう言葉にすり替えられて、

どこか軽く扱われてしまうような感覚――。


でもそれは、“嬉しい”とか“ありがたい”とか、そんな気持ちではなかった。

ただ、本当に怖かった。



わたしは、これまでに何度か、見知らぬ相手からのストーカー被害を受けてきました。


でもそれは、よくある「しつこくされた」なんて話じゃないんです。




あるとき、美容室を予約して行ったときのこと。

対応したスタッフではない、顔もわからない別の男性スタッフが、

ホットペッパーの登録情報からわたしの電話番号を勝手に調べていた。


その日から、一日中、何十件もの着信。

留守番電話には、「今日も仕事してるね」というメッセージ。


まるで行動を監視されているような気がして、息が詰まりそうだった。


当時はブラック企業で働いていて、帰宅しても寝るだけの毎日だったけれど、

家にいても怖くて眠れなかった。


ご飯を食べているのにどんどん痩せて、

気がついたら肋骨が浮き出るほどの体になっていた。


警備員を呼んで対応してもらったけれど、心の中の不安は、ずっと残っていた。




別の仕事先では、

たくさんのお客様の中のひとりに、入り口で「こんにちは」と挨拶しただけで、

そこから家を突き止められ、花が届くようになった。


花は、一度ではなく何度も。


そしてある日、仕事用のホームページのメールフォームを通じて、こう届いた。


「今日は一緒に食べれるかな?」


一度じゃなかった。何度もだった。


その頃、HPはまだ完成しておらず、連絡先を公開していなかったのに、

制作側のミスで奥の方に個人情報が出ていたらしい。


話したこともない相手だったから。

一見普通の見た目だったけど、

病気だったのか、何か精神的に不安定だったのか、わからないが。

けれど、とにかく異常だと思える言動だった。


身を守るために、わたしは実家へ戻ることを決めた。


そして、親がその花を送り返し、

「これ以上連絡を続けるなら警察に通報します」と伝えてくれた。


そのときは、本当に親が有り難くて。

実家に帰って頼ることにした。




その後も――

子どもを使って近づいてくる人たちもいた。


ある日、知らない子どもに「こんにちは」と話しかけられて。

するとすぐに、複数人の男性が近づいてきて、ひとりが言った。


「この子がね、ママになってほしいって言ってるんですよ」

「連絡先、教えてもらえませんか?」

「子どもの頼みも断るんですか?」


……初対面で、いきなり。しかも複数人に囲まれるような状況。


感情に揺さぶりをかけるようなその空気に、

強い支配と恐怖の匂いを感じた。




たとえそこまで悪質ではなくても、

見た目だけで判断して「夜の仕事をしたらもっと稼げるのに」とか、

「連れて歩きたい」「男に困らないでしょ」みたいなことを、

褒めているつもりで口にされることもたくさんあった。



相手がそれを褒め言葉だと思っていることにも、ただただ驚いた。

こっちは、反吐が出るほどあなたみたいな人間が嫌いだと思っているのに。そもそも会話するほどの仲でもないくせに勝手に話しかけてきてそれ。

そもそも一方的に評価されていること自体が、不快でしかなかった。


そんなことでお金をもらうくらいなら、舌を噛んで死んだ方がマシ。

そう本気で思っていた。


……だから、わたしが「侍」と言われるのでしょうけどね。





今でこそ冷静に書けているけれど、

当時はどれも、現実なのに現実味のないほど怖い出来事だった。



そして、なによりしんどかったのは、

それを誰かに話しても、本気で心配してくれる人が驚くほど少なかったこと。




可愛いから大変だね、仕方ないよね。っていう一言で終わらせられたり、

聞いてもいないのに「もっと可愛い子なんていくらでもいるでしょ」みたいな空気を感じることはあった。


わざわざ言われなくても

「そんなの、こっちが一番わかってるよ…」って、心の中で何度も思ってた。


何を言っても自慢だと言われることもあって、自分のことを誰にも話せなくなった。



想像もできないんだろうと思った。

もし自分にそれが起きたら?そもそも自分の娘なら?そんな風に考えることさえしないんだ。

それを聞いて私はモテないって言われてるみたいで傷つくなんて、トンチンカンなことを思うんだから。


そうわかってきたときには、

私はもう閉じきっていました。



助けてくれる人も、いなかったわけじゃない。

でもそんな人に限ってとても優しくて傷だらけで。

だから、その人が巻き込まれたらいけないと思ったら、頼ることもためらってしまって。


だから、言わなかった。

ひとりで、引きこもることも増えた。




当時はSNSをやっていたわけじゃない。

写真を公開していたわけでもない。


ただ生きていただけ。

普通に、日常を過ごしていただけなのに。


昼間の公園にいるだけで声をかけられて、

家の近くで花が届いて、何度も連絡が来て――


理由なんて、どこにもなかった。




そして、何より怖かったのは、

安心できるはずの家の近くが、一番怖い場所になってしまったこと。


近くで何かが起きるたびに、家族にまで何かあったら…と、不安が止まらなかった。


それはもう、どこにも逃げ場がないという絶望だった。

でも1人になるのも怖くて、親には申し訳ないと思いながら、出ていくこともできなくなっていた。



「親に甘えてるだけでしょ」

「自立できないんだね」

「仕事でうまくいかないから逃げたの?」


実家に戻ったことも、そうやって見られた。


何も言わなくてもそんな言葉を平気でかけてくる。想像力すらない人達。

誤解されるのにも、もう疲れてしまって、

いちいち説明する気力もなかった。




本当に、浅はかだと思った。

心ない陰口は、直接言われるわけじゃなくても、ちゃんと伝わってくるものだったから。




幸いなことに、実際に暴行されたりするようなことはありませんでした。

それだけは本当に救いでした。


でも――

だからこそ、「大したことない」と思われてしまったのかもしれませんね。

わたしの感じていた恐怖や不安は、言葉にしても、どこか伝わりきらないような気がしていたのです。



でもね、どうしても言っておきたいことがある。



恐怖を感じて引きこもってしまうことも、

日常を生きることすらこんなにも不便になることも、本当は、悪いのは相手なのに。



なのに、なんでこちらがこんな思いをして、

こんなふうに生きなきゃならないのか。


私は、それが絶対に許せなかった。


自由に、楽しく生きたかった。

なんでこの平和な国に居ながら、こんなに生きづらいのか。



現実的な対処はしてた。

場所だって関係ないのはわかった。

だからこそ、“構造”を絶対に知ってやるって、心の底で誓った。

そうじゃなきゃ、生きていけなかったから。




そこからは、怖くても曝け出して、

理解してくれる人がどれだけ少なくても、

同じように苦しんでいる人の光になれると信じてきた。


「あなたは悪くない」って、教えてあげたかった。

誰よりも…自分のために。




そして今は――


もう、何も隠していません。

今のわたしを、見ていただければ、それで十分伝わりますよね😊



 
 
 

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